福岡高等裁判所宮崎支部 昭和29年(う)390号・昭29年(う)392号・昭29年(う)391号 判決
論旨は、免訴の言渡をなした原判決に対し、事実の誤認を主張する。そこで原判決をみると、その理由には、冒頭に公訴事実を掲げ、これに次いで、「よつて案ずるに被告人等が公訴事実掲記の地域に物品を輸出したことについては各証拠によつて認定することができるげれども、」として、前叙(一)の理由により、犯罪後の法令により刑が廃止された場合にあたるから、被告人等に対しては免訴の言渡をなすべきものと説示しているので、一見、罪となるべき事実を認定した上、免訴の言渡をなしたかの如く誤解される虞なしとしないけれども、「被告人等が公訴事実掲記の地域に物品を輸出した。」というだけでは、いつ、どこから、どんな物品を、いくら、どんな方法で輸出し、それが何故に違反となるのか全く不明で、それ自体罪となるべき事実の判示として不完全であるばかりでなく、「各証拠によつて認定することができる。」というだけでは、証拠の標目を示したものともいゝ得ないのであつて、若しこれが有罪の判決であるとすれば、理由を附さないことこそまず第一に非難さるべきであろう。かように考えてくると、右説示方法の当否はしばらく措き、原判決が罪となるべき事実を認定したものでないことは明らかである。
しかして、免訴の判決は、すべて、公訴権が消滅したことを理由として訴訟を終局させる形式的裁判で、公訴事実の存否につき実体的審理をして事実の有無を審査し、その事実の認められる場合に始めてこれをなすものではなく、起訴状に記載された公訴事実(正確には各訴因)につき刑事訴訟法第三三七条各号の事由があれば、実体的審理をしないで、直ちにこれをなすべきものである。従つて、免訴の判決においては、公訴事実を掲げ、免訴の理由を説示するに止まり、罪となるべき事実を認定すべきものではなく、原判決も亦これとその軌を一にするものであるから、これに対し、事実誤認を理由として上訴をなすことは許されないものといわなければならない。(なお、大赦について、最高裁判所昭和二三年五月二六日判決、集第二巻五二九頁参照)論旨は、到底採容に由ない。
(裁判長裁判官 山下辰夫 裁判官 二見虎雄 裁判官 長友文士)